2011年5月12日木曜日

ダメ出しコミュニケーションの社会心理―対人関係におけるネガティブ・フィードバックの効果

「ダメ出し」はジョハリの窓でいう盲点領域を認識するのによく,人の成長に欠かせない.しかし,ときにはダメ出しが人間関係を損ねたり,やる気をそいでしまったりする.本書はどのようにダメ出しをするべきなのかを社会心理学の実験から検討している.

ダメ出しが失敗する1つの理由は対人コミュニケーションの失敗にあるのは誰でも予想できることだろう.コミュニケーションを行う際に,伝えたいことが正確に伝わらないのはよくあることだ.また正確に伝わったとしても,受け手が過剰な反応をせず,正しく反応できるとは限らない.

加えて,送り手と受けての状況や文脈,つまり「コンテクスト」を考慮しなければダメ出しは失敗するとも著者は指摘している.場所,親しさの程度,地位関係,社会的なルールも考慮してダメ出しを行わなければならない.なぜなら,ダメ出しは相手の面子をおびやかすフェイス脅威行為だからだそうだ.そこで,ブラウンとレビンソンの「ポライトネス理論」からある行為のフェイス脅威度を予測する公式を示している.
ある行為のフェイス脅威度=「送り手と受けての社会的距離」+「受けてが送り手に対して持つ勢力」+「その行為が与える負担」
親しくない人からダメ出しをされるとフェイスを脅かされる点は実験でも示されている.ただし,この公式では,受け手が目上の場合と,受け手が目下の場合はダメ出しの満足度が低く,対等な場合に満足度が高くなることをうまく説明できないと指摘している.そこで,接近型フェイスと自律型フェイスの考え方を持ち出している.
接近型フェイスとは,「相手に好かれている自分,認められている自分」というようにいわば,相手に対して接近する方向の欲求が満たされることで維持されます.一方,自律型フェイスとは「思うように行動できる自分,相手から自由でいられる自分」というように,相手からの自律を保証されていること,つまり,相手から離れる方向への欲求を満たされている状態によって維持されます.
力のある人からのダメ出しは自律型フェイスを脅かすという.

ダメ出しは他人のことを思い,普段から何気なく実施する行為である.その行為が人の成長に欠かせないが,ときには負の影響を出してしまう難しい行為である.ダメ出しに関しては,コーチングに関するノウハウが書かれた本も参考になるかもしれないが,前述のようにダメ出しの効果はコンテクストに大きく影響されるので,場合によっては悪い参考にもなりかねない.ときには,社会心理学の見地からダメ出しを考えた本を読むというのも良いかもしれない.


おまけ
最近は実験結果の分析で使われている重回帰分析をどの程度信じていいのかわからないことが多い.統計は非常に難しい.



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