やつと会ったのは、山口の名湯、湯田温泉で一風呂浴び、電車で防府に帰っていたときだった。やつは私より先に電車に乗っていた。あれを乗っていたと表現するべきかなのかは分からないが、間違いなく私より先にやつはいた。
やつははじめからすごいことをやっていたはずなのだが、私もその存在に気づくのには時間がかかった。他の乗客はやつに気づかない。私だけがやつのワイルドな姿をとらえたのだ。
やつとの出会いは前触れもなくやってきた。電車のゆれがひどくて本を読むことが苦痛で、ふと窓の「外」を見た。緑色の何かがありえないところでゆれてい るのが視界に飛び込んできた。ガラスの向こうが彼の席だった。ジェームズボンドばりに窓にしがみつきながら無賃乗車を高らかに宣言している。
その小さな体は空気抵抗で激しく揺られながらも毅然とした態度を見せている。頭に生えた2本のものが激しい風のせいで形が崩れるのが気になるのか、窓に 必死でしがみきながらも、片手を離してそれをなおそうとしている。そのしぐさは英国紳士のようだが、やつは時速60キロで走る電車にしがみついている真っ 最中だ。
ロックを理解しない私だが、やつは間違いなくロックだ。
せまるー、しょっかー♪
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